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ボランティア体験記
「暑くて熱くて厚かったカンボジア」

広浜千絵さん (第6回SCHECカンボジア支援活動 05年3月参加)

カンボジア最終日

■壮大さと神秘を併せ持つ場所、アンコール・ワット。

 かつてクメール・ルージュが占拠していたアンコール・ワットへ。広大な敷地にはいくつもの遺跡が点在している。外は耐えがたい暑さだが、建物の中はひんやりとしていた。どこまで続くか見えないほど長い回廊の壁一面に神話をモチーフにした緻密な彫刻が施されている。外側の壁面いっぱいのレリーフ、巨大な仏頭、磨崖仏のような彫像……それぞれタッチが異なり、とても繊細なものから粗いものまで実にさまざまだ。

 鮮やかなオレンジ色の衣を身につけた若い僧の一団がいた。「写真を撮ってほしい」と身振りで伝えるので彼らのデジカメで撮ってあげると、同行のもえちゃんと私とも「一緒に写真を撮りたい」と言っているらしいので彼らのカメラの中に収まった。これから修行に入る僧たちなのだろうか。

   遺跡は所々で修復作業中だった。その作業には日本とフランスが尽力しているそうだ。遺跡群はたくさんありすぎて、また敷地も広すぎて、どこを歩いているのかわからなくなった。外に出たり中に入ったり、階段を上ったり下りたりして暑いわ疲れるわで脱水症状を起こしそうだ。それでも、人類の財産である壮大な芸術品から目が離せない。

 途中、階段とも呼べないようなステップの狭い急階段があった。見上げると急斜面の岩場のようでもある。手すりも何もないので、よじ登るように上がるしかない。あまりにも怖いので身がすくむ。諦めようかと思ったが、年輩の方々がどんどん登っていくので、私も意を決して登り始めた。ちょっとでも下を向いたら落ちちゃうかも〜、ここで滑ったら確実に死ぬよ〜、上だけ見てッ、しっかりつかまってッ!自分を叱咤激励しながら何とか上に辿り着いた。

 そこに広がるのは空中庭園のような石造りのスペース。アンコール・ワット周辺の風景が見渡せ、線香の煙が漂う小さな参拝所があり、あちらこちらに仏像の美しいレリーフが配されている。さっきの階段はある種の修行場で、ここはそのご褒美か?下りの階段も同じように急だったが、手すりが付いていた。それでも細くてグラグラする代物だ。後ろ向きで下りて着地したときはホーッと深いため息が出た。今まで死人やケガ人が出たことはなかったのかしらん。ホントに危ない!いや、もしかしたら私に体力がないだけなのかも。

 ランチは鍋料理。具材は豚肉、イカ、豆腐、春雨、空芯菜、トマト、しいたけなど。デザートはバナナのフリッター。


■人骨の上に咲く笑顔。キリングフィールドが伝えるもの。


 空港へ向かう途中、キリングフィールドへ。これはプノンペンを中心に国内に何ヶ所かあるそうだ。小さなお寺のような敷地の中央に塔が建っている。塔の中心部分はガラスで覆われていて、なかにはいくつもの頭蓋骨が重ねて納められている。石碑や墓誌などでは悲惨さはリアルに伝わらない。ヒトの骨そのものが眼前に曝されることで、人間の善と悪の矛盾や戦争の名の下に発する狂気、他者の命を奪うことの無意味さ、空しさが激しい怒りを伴うのではなく静かな哀しみをもって迫ってくる。カンボジア人と日本人、ほかの国の人々も外見はちがうけれども、骨になれば皆、同じなのだ。

 太陽が輝き、陽射しが強い。鳥のさえずりが聞こえるその塔の周りを子どもたちが自転車に乗って走り回り、邪気のない目をして笑顔で私たちに手を振る。キリングフィールドは彼らにとって遊び場なのだ。戦争を知らない子どもたち。私もまた然り。彼らに手を振り返しながら、この地に二度と戦火がもたらされぬようにと祈った。
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