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ボランティア体験記
「暑くて熱くて厚かったカンボジア」

広浜千絵さん (第6回SCHECカンボジア支援活動 05年3月参加)

カンボジア第3日

■笑顔と緊張の表情に包まれた小学校開校式。

 ホテルのダイニングでバイキング朝食。ピラフ、目玉焼き、ベーコン、サラダ、フルーツ(スイカ、パイン)、コーヒー。

 小学校の開校式に列席する。バスでずいぶん走った所に 大きな平屋建てがポツンとあった。それが小学校の校舎 で、周りには何もない。でも、どこから集まるのか、た くさんの子どもたちがいた。白いシャツ・ブラウスに紺 色のズボン・スカートが制服らしい。幾人かの子どもた ちが鮮やかな民族衣裳をまとって現れ、ゆったりとした 調べに乗って伝統舞踊を披露した。来賓の長い挨拶が続 くなか、子どもたちはジリジリと照りつける太陽の下に しゃがみ、じっとおとなしくしている。

 来賓席のテントの裏に回って風景写真を撮っていたら、 ポンポンと肩を叩かれた。振り向くと正装のカンボジア 女性が6人いた。白いレースの半袖や七分袖のブラウス に玉虫色に輝く赤、オレンジ、ピンク、グリーンなどの ロングスカートという装いで、とてもあでやかだ。彼女 らは笑みをたたえて「写真を撮って」と身振りで伝える 。6人を並べて撮影し、デジカメの画像を見せるとみん な口々に何か言いながら、うれしそうだった。だけど、 どうやって写真のプリントを渡せばいいのだろう。彼女 らは「写真を送って」とも何も言わず、私に手を合わせ て礼を伝え、式典の手伝いをしに戻っていった。

 あたりをウロウロしていると、制服の列に並んでいない 数人の子どもたちが目に入った。きょうだいだろうか。10歳ぐらいの男の子と6歳ぐらいの男児と女児。校舎の横にかたまって座り、制服の子たちを眺めている。一見 して貧しそうな衣類を着ているこの子らは小学校には入 れてもらえないのだろうか。事情がわからないのでカメ ラは向けられなかった。

 式典の終了後、ボランティアの 人々は手分けして児童らに寄付された歯ブラシを配った 。私も少しだけ手伝ったのだが、段ボール箱にたくさん 入っている歯ブラシは“歯医者さんが考えた”機能的な タイプからホテルや旅館の名入りの安っぽいタイプまでさまざま。子どもたちには無造作に配るのだが、もらった歯ブラシを見せ合っている子どもたちの姿を見て、寄付の品だからどうしようもないのだけれども、公平というのは難しいなと思った。ノートや鉛筆などをプレゼントすることもあるそうだが、その翌日には親が貧しさゆえに市場に売ってしまうこともあるらしい。私はこっそりと制服を着ていない子らにも歯ブラシを渡した。偽善だ、自分が寄付したものでもないのに、と思いながら。

 日本の小学校の入学式なら、児童は緊張しつつ、笑い声も絶えないだろう。しかし、この学校の子どもたちにはあまり笑顔が見られず、笑い声も聞こえてこない。断りもなくカメラを向けたから警戒したのだろうか。それとも外国人の多さに戸惑っているのだろうか。翌日以降には校舎に子どもたちの声が響き渡り、朗らかな笑い声が外まで聞こえてくるような学校になるのかもしれない。昼食は民家が建ち並ぶ街の一角にある家の食堂で食べた。アヒルの丸ごと蒸し煮、魚と野菜のスープ、干し魚、魚と野菜のテリーヌ風の葉包み蒸し、スイカ等々。


■市場が映し出すリアルなカンボジア。

 市街地へ戻ってから、繁華街のマーケットを友子さんに案内してもらった。ひとまずマッサージ店で疲れを癒してから、色とりどりの布地を売っている店で物色を始めた。小学校で出会った女性たちの装いが素敵だったのでマネしてロングタイプの巻きスカートを買おうと思ったのだ。マーケット内は薄暗いので色合いがわかりにくい。私は手に取った布をいちいち入口あたりまで持っていって自然光で色を確認し、さんざん迷って玉虫色のオレンジ系を選んだ。

 友子さんが「布を買って仕立てても安いよ」と言うのでカンボジアの民族衣裳風スーツを作ることにしてパープル系の細かな柄の布地も買った。値段の交渉はすべて友子さん任せである。市場の一角にミシンを掛けている女性たちがいて、彼女たちに頼めば仕立ててくれるという。スリーサイズをメジャーで測り、希望の襟ぐりの形、袖丈、スカートの長さを伝える。上衣は布の表地、スカートは裏地を使ってパープルの色合いが微妙に変わるようにと友子さんにオーダーしてもらった。

 食材の市場も薄暗く、いろんなものがゴチャゴチャと並んでいていったい何が売られているのかも判別しにくい。デザート屋さんに若い娘たちが群がっていた。地面にいくつもの大きなボウルが置いてあり、それぞれにココナッツミルクなどの液体やフルーツの角切り、何だかわからないものが入っていて、お客がいくつか指さすと、まとめて容器に入れるのだ。友子さんはジューススタンドのそばで「ここのジュースがおいしいの!」と言。生のフルーツと氷を一緒にミキサーで撹拌するスムージーのような飲み物らしい。一瞬、「氷に注意!」という友人の言葉が脳裏をよぎったが、おいしそうなものを目の前にして見過ごすことができようか。ジュースはとてもおいしかった。

 友人・知人へのお土産を探していると、友子さんが「カンボジアの胡椒っておいしいのよ」とアドバイスをくれた。私の周りには料理の専門家や食いしん坊が多いので、うってつけだ。小分けにされた黒の粒胡椒を20袋求め、これまた友子さんに値段交渉をしてもらう。帰国後、お土産を渡した料理好きの人たちには「香りが全然ちがう!」とたいへん喜ばれた。



 市場の外へ出ると、一口大の丸い腸詰めがたくさんぶら下がった屋台があった。数個を串に刺して焼いており、香ばしい匂いが漂っている。思わず私は「これ食べた〜い!」と飛びついた。友子さんと「おいしいね〜!」と言い合ったのだが、彼女から「ちえさんってホントに何でも食べるのね」とも言われた。カンボジアに長く住む彼女でもやはり、時にはおなかを壊すことがあるらしい。

 夜は観光客向けレストランへ。非常に広いオープンエアの店で、料理はバイキング形式。ステージでは民族舞踊のダンサーらが踊っている。村人風の男女がユーモラスな掛け合いを演ずる素朴な舞踊やきらびやかな衣裳をまとった女性たちの舞など多彩な内容。その後、バーへ移動してトロピカルドリンクを飲む。

 帰りはバイクタクシー。その日はボックス型ではなくバイクの後部席に乗るタイプで、少年のような若者が運転した。なま暖かい風を切って走るのは本当に気持ちがいい。すっかりバイクタクシーが気に入った。
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