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「暑くて熱くて厚かったカンボジア」
広浜千絵さん
(第6回SCHECカンボジア支援活動 05年3月参加)
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酔った勢いでカンボジア行き決定!
「ボランティア!? 私、そういうのってキラ〜イ!」ある夜、新宿ゴールデン街のある店で隣に座った田口氏に向かって私はそう言い放った。彼は雑誌記者の仕事のかたわら、カンボジアで井戸掘りボランティアを行うNPOの理事でもある。
「世の中にはエセボランティア団体が多いでしょ。NPOを隠れ蓑にしてるアブナイ組織だってあるじゃない。日本のボランティア団体って『無料奉仕という大義名分をまといつつ、善意の人からカネを巻き上げて儲けをたくらむ』というイメージがあるなぁ。それに、『私、ボランティアやってるんです』って胸を張って声高に言う人もいるでしょ。いかにもそれが善人である証明みたいに。本当の善意なら他人に言い触らさないで黙って奉仕すればいい。『私、ボランティアが趣味なんです』って楽しそうに言う人がいれば、まだ救われるけどね」と、なおも言い募る私の言葉に田口氏はニコニコしながら耳を傾けていたが、その後、なぜカンボジアに支援が必要なのか、組織だたないと何も動かせないといったことを幼稚園児に言い含めるように解説してくれた。
そして、NPOに参加しているのはかつて戦地であったカンボジアやラオス、ベトナム、タイなどを取材した経験から、ある種、贖罪の気持ちもあるのだと彼は言った。田口氏らの活動はともかく、私はかねがねボランティアというものは自己満足だと思っている。本人が意義を感じて楽しんでいれば何も害はない。思想や宗教と同じく、他人に強制さえしなければ。
カンボジアでは完成した井戸の視察のほか、小学校の開校式にも立ち会うという。井戸も小学校も寄付でまかなわれたもので、井戸を1本掘る費用は日本円で2万円ぐらいだとか。寄付した人や団体の名は看板に記される。その看板と井戸を撮影した証拠写真(?)を撮るのも田口氏の任務の一部であるらしい。彼がカンボジアについて熱く(暑苦しく?)語るのにつられ、持ち前の好奇心がムクムクと湧いてきた「それでも、私はボランティア精神なんてカケラもないよ」と言ったら、田口氏は「ぜーんぜん構わないよ。
ボランティアだと思う必要はないからさ、観光気分でおいで。百聞は一見に如かず。ツアーじゃ絶対に行かない所にも行けるよ」と言う。お仕着せのツアーが苦手な私にはぴったりだ。田口氏のクリクリした大きな目を見ていると、私自身は生まれつき目が細いだけでなく狭量ゆえに視野も狭まっているのかもしれないと思い直し、アンコール・ワットにも行けるしな〜、本場のカンボジア料理も食べられるし〜、私が井戸を掘るわけじゃないみたいだし〜という気楽な発想と酔いも手伝ったこともあって「よしッ、行く!」と答えた。
海外へ行った経験はそう多くはないが、これまで、韓国やブルガリア、モンゴル等々、いずれも酒場で友人・知人に誘われては酔った勢いで「行くッ!」と宣言し、そのつど現地で学び、楽しみ、さまざまな体験ができたのだった。翌日、「また酔っ払って約束しちゃったよ〜」と思いつつ、私は世界地図を広げてカンボジアの位置を確認した。友人・知人に「カンボジアへ行くことになったの」と伝えたら、「向こうは死ぬほど暑いから水をたくさん飲め」だの「飲みものの氷で下痢をするから気をつけろ」だの「一日中、日焼け止めを塗らないと大変なことになるよ」だのといろんな忠告を浴びせられ、私は胃腸薬に風邪薬、解熱剤等と強力な日焼け止めクリーム、UVカットの帽子やストール、手袋などに加え、ペットボトルの水まで数本スーツケースに詰め込んだ。
その頃、ある週刊誌に船戸与一が連載していた小説の舞台が偶然にもカンボジアで、なんとはなしに読んでいた私にとってハードボイルドな船戸ワールドがカンボジアのイメージとなっていた。ポル・ポトやキリングフィールドについても言葉のみ知るだけで、予備知識はまったくない。とりあえず、海外へ行くときには「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」「ありがとう」「ごめんなさい」という5つの単語を覚えて行くことにしているのでインターネットでカンボジア語のその5つを調べ、在日カンボジア大使館のホームページもチェックした。
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