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参加者が見た歯科事情/歯科活動レポート(歯科医師)
「カンボジアでの歯科治療経験―2年間の比較と今後の課題―」
歯科医師 小坂美樹さん/2003、2006年歯科診療活動参加
1. 今までの活動記録
 2003年2006年度の歯科治療に参加。
2. 診療内容
 歯科治療(抜歯、セメント充填)、小学校での歯科検診、ブラッシング指導
3. 診療中に気づいたこと。
 歯根が長い。歯周病が少ない。小児の多発う蝕が多い。(というよりほぼ全員) 2006年度はむし歯が多い。口腔衛生状態が悪い。歯磨きの習慣がない! 虫歯なのに抜きたくないという人が2003年度に比較して増えた。
4. 体験談
 私は2003年度と2006年度の歯科治療に参加いたしました。2006年度に参加して、まず感じたことは、村の様子がなんとなく豊かになっていることでした。これは、シェムリアップからの移動距離に比例するものかもしれません。歯科治療をしている傍らにはアイスを売りに来る人がいて、横で子どもたちがお金を払って食べていました。また、いつもご馳走になるお昼ご飯には前回までなかった炭酸飲料がおいてありました。
 歯科治療を始めてみると、人々の口腔内の変化に驚きました。2003年度は、むし歯があっても、歯周病で歯石がついていたり、動揺歯があったりする人は少なく、C3かC4であれば抜歯でOK、という処置が多かったのですが、今回は前回と異なりました。全体にプラークが付着し、広範囲のう蝕がある。抜歯までは・・・と考えるような状態でした。小児においても同じでした。これは、来年行ったらどうなっているのだろう・・・と不安がよぎりました。治療の内容についても、抜歯を希望しない方が大勢いました。


検診のときに撮った子どもたちの口腔内です。
プラークが大量に付着。
すべての歯がむし歯です。
 また、歯を白くしたいという希望もありました。日本では当たり前のことですが、2003年までのカンボジアでは聞かれなかった声でした。外での治療には限界があり、結局何もせずに帰っていただくか、セメント充填をして我慢していただくようになってしまいました。また、歯周病のため、歯肉が痛いといった患者さんにはブラッシングをよくするようにと伝えましたが、ブラッシングはしていないとのことでした。通訳の方に何歳らブラッシングするのかときくと、6歳になったら歯磨きをすると答えていました。しかし、小学校で検診時に歯磨きをしたことがあるかと聞くと、皆ないと答えました。
 町で、どこに行けば歯ブラシが売っているのかを探すと、マーケットでは売っていましたが、サイズは1種類しかなくて、大きいもののみ。種類もなく、満足のできる歯ブラシはおいてありませんでした。やはり、歯磨きの習慣が浸透していないのでしょうか?この点が一番の問題であることに気がつきました。
 生活が豊かになり、好きなおいしい甘いものを食べることができるようになった。これは人が豊かになり、気持ちに余裕がでて、とても良いことです。しかし、それでは必ず何か裏には問題が出てくるはずです。
 日本でも、昭和の始めの時代には、そうではなかったでしょうか?歯磨きの習慣がなく、甘いものが蔓延したために、う蝕歯が増え、今の60歳以上の方で治療したことがない人は少ないでしょう。歯を喪失し、義歯を入れている人が多いでしょう。昭和初期に味噌っ歯といわれる塗銀をした子供がたくさんおり、歯医者はいつも混んでいてとても儲かっていたといわれています(私は知りませんが)。日本では今やっと予防する概念が定着しつつあり、歯磨きの習慣がついてきていると思います。そこに至るまでに3世代の時代(約60年)が必要だったわけです。この日本での失敗をカンボジアでくりかえす必要はないのではないかと思います。このままいくと、治療先行型(日本的で、事が起こってから考える発想)になっていくような気がします。歯は一度削るともろく、将来喪失する可能性がでてきます。治療をしないで、お金もかからずにすむ、予防の概念を浸透させることが本当に必要で、それを経験してきたわれわれ日本人がアドバイスや教育をしていく必要があると感じます。私は障害者歯科をしていますが、彼らに必要なのは治療ではなく、予防なのだとつくづく感じます。それを理解していただくために、日常の診療を行っているわけです。カンボジアでも同じことが言えます。このSCHECの活動でも治療だけでなく、予防の概念を浸透させる活動が必要であると感じています。
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