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活動レポート
第35回SCHECカンボジア支援活動報告  19年11月
 11月19日~25日の日程で、SCHEC第35回目となるカンボジア支援活動を行ってまいりました。今回の参加者は井戸・学校視察グループが32名、歯科グループが26名の総勢58名の団体となりました。天候に恵まれ、晴天続きでしたが、いくぶんか風も吹いて、比較的過ごしやすかったように思います。
 
 今回はおかげさまで108本の新たな井戸のご寄附をいただき、為替差益で掘る「SCHEC井戸」を加えて、合計111本の井戸を掘ることができました。また小学校1校、中学校2校を建設し、開校式典の後に生徒たちに歯のブラッシング指導や手洗い指導を行ってまいりました。歯科診療活動は、これまでと同じコックトロックルー・サンキム中学校とスレノイ中学校・高校を拠点に、3日間で合計233名の村人たちを治療しました。まだ春の景色を残した4月下旬、19日~23日の日程で、SCHEC34回目となるカンボジア支援活動を無事終えてきました。NPO法人を設立して17年目の活動であるとともに、月並みに言えば、「平成最後の活動」となりました。

【井戸掘り事業】

 日程が立て込み、井戸視察にあてる時間は22日の午後と23日、24日、25日しかなく、果たして111本の井戸を全部視察できるか、いささか不安でしたが、24日までに無事終了することができました。
 22日は参加者やその関係者の井戸を優先的に31本の井戸を29名で視察しました。プーク地区の集落を中心に井戸を掘ったために、1本あたりの利用世帯数は2世帯と少なめでしたが、その分、井戸を多く視察できたようです。それでも、けっこう歩かされました。

 23日、24日は井戸視察参加者が少なく、例によって「バイク部隊」が活躍しました。
 人数が4人ほどだったので、現地の人に頼んでバイクに乗せてもらい、大勢でぞろぞろと回ることなく、次から次へと風を切って井戸を回りました。そのため、23日、24日の2日間で合計80本の井戸を回り切りました。 

 「SCHEC井戸」には「SPECIAL THANKS TO ALL DONATORS」の看板をつけ、みなさんのご寄付から生じた為替差益で掘った井戸であることを示しています。今回は3本のみでしたが、次回には多くの「SCHEC井戸」が掘れることでしょう。 
 井戸は1世帯あたりで父母、子供3人、それに祖父母をいれて、5人~7人が利用すると計算しております。
     
 
 
【学校建設活動】
 今回も故・渋谷寿代さんの基金で小中学校の校舎を建設することができました。ルバクプレイ・寿代・サンキム小学校、センソック・寿代・サンキム中学校、コサムローン・寿代・サンキム中学校の3校です。サンキムの言葉はカンボジア語で「希望」の意味です。SCHECが建てた1校目からサンキムと寄付者の名を付し、サンキムシリーズとして、今回で合計34校の学校を建設することができました。
 
 ルバクプレイ小学校は今年4月に視察し、トタンで囲った教室で、床も地面そのまま、雨季にはさぞかし雨漏りなどで大変だろう、炎天下でトタンが熱を帯びてさぞかし暑苦しかろうと容易に想像できる悪条件の校舎でした。鉄筋コンクリート5教室の校舎が完成しました。センソックとコサムローンの中学校校舎は昨年11月に視察して以来1年かかりました。センソック中学校は2階建て8教室の校舎です。以前と違い、ルバクプレイとセンソックの教室はガラス窓となりました。
 
 コサムローン中学校はSCHEC初めてとなるシェムリアップ州以外の地域、コンポンチャム州に建てた中学校です。実はコンポンチャム州はSCHECのパートナーで国会議員のシアン・ナム氏の生まれ故郷に当たります。同州出身者の実業家と共に渋谷基金をメインに3者共同で資金を出しました。コサムローン中学校はメコン川の中洲の大きな島にありますが、雨季にはメコン川の水量が増すために、半年は水没、浸水します。建物に残る浸水の跡を見ると、約2mのところもあります。そのため、校舎は高床式の頑丈な建物になりました。
 
 コンポンチャムまでは21日午前のセンソック中学校の開校式後に向かいました。バス2台を仕立てて国道6号線をプノンペンにひたすら向かいます。途中ゴムの木が等間隔で並ぶプランテーションを通り抜け、およそ5時間の道行きです。到着したときはすでに夕暮れで暗くなりかけていました。ナム氏の手配でパトカーが先導しました。これも初めてのことです。VIP待遇のボランティア活動となりました。できたばかりのメコン川沿いのラグジャリーなホテルで1泊し、翌朝、島に向かいました。橋はなく、渡し船で川を渡ります。メコン川の雄大さを感じるひと時でした。開校式にはおよそ1500名の村人や生徒たちが集まり、一大イベントとなりました。テレビのインタビューに答える中学生たちも校舎ができたことを本当に喜んでくれていました。
 
 開校式にはそれぞれ、池上宏監事、梶原九州男理事、三宅宗夫会員に代表のあいさつをしていただき、山内德子さん、木村正子さんに渋谷さんの生前の言葉を代読していただきました。また歯科医の瀬川正嗣さん、泉亜矢子さん、鈴木将之さんにもブラッシング指導手洗い指導の告知をしていただきました。
 
ルバクプレイ・寿代・サンキム小学校 センソック・寿代・サンキム中学校 コサムローン・寿代・サンキム中学 
ルバクプレイ・寿代・サンキム小学校の開校式の様子
 
【歯科診療活動】
 今回は歯科医、歯科衛生士、看護師、ボランティア26名中、歯科医が8名だったため、コックトロックルー・サンキム中学校とスレノイ・赤坂・サンキム中学・高校で診療活動を行いました。以下は、歯科グループのリーダーの一人、鈴木将之さんの報告です。
 
<2019年11月20日から22日の3日間にかけて、コックトロックルー中学校、スレノイ中学高等学校、センソック中学校で歯科診療を行い、開校式と並行してルバックプレイ小学校、コンサムローン中学校でブラッシング指導と手洗い指導を中心に行った。
 
 今年度は歯科医師9名、歯科衛生士8名、歯科助手1名、歯科技工士1名、看護師2名(内1名は手伝いボランティアとして参加)、手伝いボランティア5名が参加した。初参加者は10名だった。活動前日にあたる19日に診療メンバー全員が現地到着をして、診療器具の振り分け、発電機の動作確認、薬剤の袋詰め、消耗品補充などの活動準備を開始した。

 初日の20日はコックトロックルー中学校での歯科診療とルバックプレイ小学校の開校式に参加した。歯科診療はいつものように校庭に教室の机を出すと、器材消毒をする中央テーブルを中心に5人ほどが同時に診療できるように机を配置した島を2つと、そこにポータブル診療椅子を5台組み立てた。

 治療では、前歯部のコンタクトカリエス(歯と歯の間の虫歯)が今回の診療に多く散見した。以前までは臼歯部(奥歯)の重度う蝕(大きな虫歯)が多かったが、地域環境やおやつに食べる物の内容が変化したためなのか、前歯部のカリエスが目立つようになったと考える。また昨年の活動あたりから、歯科衛生士の活動の幅が大きくなっている。従来は齲蝕治療や抜歯が多く、そのための器具消毒や診療補助などが中心であったが、現在では口腔内のクリーニング、歯石除去、口腔衛生指導のニーズが高まってきている。そのため本活動においても歯科衛生士が中心となるそれらの活動に移行しつつある。また、スレノイ中学高等学校はSCHECにおける口腔衛生環境改善のモデル地区として捉えているため、歯科衛生士や看護師を中心とした衛生教育に重心を置きつつある。
 
 今回は井戸掘りグループや学校グループと共に、コンポンチャムにあるコンサムローン中学校の開校式にも1泊で歯科から3名が同行した。開校式の後に全校生徒を4クラスに分け、手洗い指導とブラッシング指導をそれぞれ10分ほどの短い時間であるが行うことが出来た。生徒らの反応も良かったように思われる。
 
 歯科チームによる歯科診療だけでなく、井戸掘りグループと学校グループのメンバーと時間を共有したことで、SCHEC全体の絆がさらに強固なものになったと感じた。>
 
     
     

【2020年の学校建設計画について】

 11月25日、山中事務局長と小中学校2校を視察してきました。少子化の日本と違って、子供の数は増える一方のようです。昨年カンボジアの平均年齢が25歳、それが今年は24歳と言われています。つまりそれだけ子供が生まれているということでしょう。今回視察した小中学校はそうした子供の人口増を反映したものとなりました。生徒数の増加に教室の数が不足する、1クラス当たりの人数が多すぎて適切な教育ができないなど、かつて日本が抱えていた問題もあるようです。またタイに近いために出稼ぎに行く親に同行し、勉強を中断せざるを得ない事情もあるようでした。下記は視察を簡単にまとめたものです。

 5教室の校舎が完成するには4か月、2階建て8教室には7か月かかります。来年4月にはスラナール小学校、11月にはコンポンタカウ中学校の完成を予定したいと思います。 

1) スラナール小学校
クロライン郡スラナール地区コックトローム村
対象村:コックトローム村、コックトナール村、スラナール村、ロムディン村
人口2665人、581世帯
現在の生徒数:幼稚園生~小学6年生(405人、うち男生徒205人、女性と200人)
 年々子供の数が増えており、一昨年326人、昨年は371人だった。タイに近く、出稼ぎが多い。出稼ぎには子供を連れて行くことが多く、その間、勉強はできない。帰国して再入学する子もいる。また現在、74人の幼稚園生が通っているが、いきなり小学校に入学する子もおり、正確な数は把握できていない。
 教師は現在13人で午前(7:00~11:00)、午後(13:00~17:00)の2部制だが、4時間の授業時間では不足のため、フルタイム化したい。しかし、そうすると必然的に教室の数が足りなくなってくる。
(ルンロー郡長、トムフーム校長、モーポーク教育長に聞く)

 2) コンポンタカウ中学校
クロライン郡コンポンタカウ地区ドーダンタライ村
対象村:ドーダンタライ村、コックドーン村、バイチャンボハーイ村、プノンプロムバー村、コンポンタカウモイ村、コンポンタカウピー村、オータカウ村、クサック村、隣の郡のトゥームコンポンタカウカンレイ村、プノントォーイ村からも一部通う。
現在の生徒数:279人(中学1年生139人、2年生73人、3年生67人)
 高学年になるに従い生徒数が減っているのは、①タイへの出稼ぎのために学校を辞める②違う学校へ通う③学校を諦めるなどの理由。コンポンタカウ中学校は2014年に設立になったばかりの学校で、教室も同小学校に間借りしているために、教室の数が足りず、他の地域の中学校に通わざるを得ない状態にある。また、家の手伝いなど
で学校に来られなくなる生徒もいる。
 因みにコンポンタカウ小学校の生徒数は幼稚園生、小学生合わせて1404人で、内訳は 幼稚園生215人、小学1年197人、小学2年204人、小学3年198人、小学4年195人、小学5年199人、小学6年196人となっている。
 来年の小学卒業生を考えても、中学専用の校舎建設が望まれる。
(ケアオサムナム中学校長、プリアップサーリェン小学校長に聞く)
     
スラナール小学校 1996年8月建設のコンポンタカウ小学校に間借り 


【その他のこと】

 これまでに掘った井戸は合計3351本となりました。小中学校も34校を数えます。これもみなさんのご支援の賜物と感謝いたします。今回も東京都中央区の小中学校のみなさんが文房具を集めていただき、担当される松川昭義会員から開校式の学校に寄贈していただきました。また島村佳孝会員はご自身の寄付で建てられたスレン小学校の校長の要望により、300冊を超える日本の漫画の古本を寄贈されました。字が読めなくても絵があればいいそうです。他の学校にも広がりそうな予感がします。
 
 ライオン株式会社からは毎年2000本を超える歯ブラシをご提供いただき、歯科診療や井戸視察で配らせていただいております。「きれいな水でなければ歯を磨く気にもなれない」というさる歯科衛生士さんの一言で、井戸視察にも歯ブラシを配るようになりました。また手洗い指導ではたくさんの石鹸をご提供いただきました。
 
 今回、新たに校舎を建設したルバクプレイ小学校では、4月に視察した時のトタン作りの教室を壊すことなく、そばに移築して利用していました。それを見て「MOTTAINAI」(もたいない)という、今では国際語になっている日本の言葉を思い出しました。また、できたばかりの井戸を村人たちがとても大切にしてくれ、チェックのために水を出すときもきちんとたらいやバケツで受けて無駄にしないようにしてくれます。貴重な水をもったいながってくれているんだなと思うと、思わずこちらも顔がほころびます。
 
 われわれが活動する奥の農村地帯に水道が通ることはずいぶん先のことと思います。まだまだ井戸が必要で、そして学校も歯科保健衛生も十分ではありません。今後ともみなさまのご支援、ご協力をお願いいたしたく、何卒宜しくお願い申し上げます。
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