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ボランティア体験記
「カンボジアの青い空、白い雲、そしてはるかな地平」

本間義雄 (第9回SCHECカンボジア支援活動 06年11月参加)

 SCHECの活動状況を目の当たりにしたいと、私は他の方々と一緒に2006年11月22日から25日までカンボジアを訪問しました。

 喧騒のハノイを経由して降り立ったシェムリアップ空港は、高い建物もなく静かでのどかな田舎の飛行場、といった趣きでした。
 内戦、地雷、ゲリラといったイメージが強かった私は少々緊張してタラップを降りましたが、空港のバーでビール片手に出迎えてくれた田口さんを見て、気分が解放されました。街までの6号線沿いは立派なホテルが建ち並び、その様子は「あれっ」と思うほどのものでした。私たちが泊まったホテルも大きく立派で、滞在中ゆっくりと過ごすことができました。


建設中の簡易水道を視察、勢いよく飛び出したきれいな水に、みんな感動。

 2日目、ワゴン車で井戸を見に出発。舗装道路を村への入口で外れたとたん道は凸凹の激しいものに変わり、車は大海原を行く小舟のように翻弄されて、ようやっと最初の村に着きました。高床式の家々があり、小さな店もある村には豚やにわとりが放し飼いにされ、元気な子どもたち、興味津々の目をした大人たちが集まっていました。村の佇まいや生活の様子は、いくつかの現代文明が入っているにしても古代の村落のそれのように私には思えました。
 この村の井戸はレンガ造りの建屋に収容され、電動ポンプで水を汲み上げてタンクに貯め、塩ビパイプで家々に水を引くという新しい試みのものです。まだ工事中でしたが、発電機を回してポンプを動かすと、勢いよく水が出てまわりから歓声が上がりました。
 この後、広大な地域に点在する村々に掘られた多くの手押しポンプ付き井戸を見に回りました。村々への道は相変わらずの悪路で、車は前後左右に大きく揺れながら、土煙をあげて進んで行きます。道に沿って流れる泥水の小川では裸の子どもたちが水浴びか魚とりか、広く青い空、白い雲、はるかな地平とともに心やすらぐ風景を描いています。

 井戸は昔、日本でも多く見られたものと同じもののようです。地面はコンクリートで固められ、簡単な柵も設けられて衛生的でしっかりした造りです。井戸の1本1本に寄付した人の名前を記した銘板が立てられています。日本から遠く離れた土地でこのようにして自分の名前を見るのは不思議な感じがします。井戸井戸では子どもたちにノートやボールぺンなどのおみやげを配り写真をとりましたが、時間があまりなくてゆっくりできないのが大変残念でした。


視察を通して支援活動が広がること、継続されることの大切さを実感。

 3日目、今日はクラクモム・サンキム小学校の開校式です。子どもたちの持った日本とカンボジアの小旗が打ち振られるなかを会場へ進む、これにはちょっと感動を覚えました。私たちは校庭に設けられたテント張りの祝賀式場の壇上にあがり、炎暑のなか、椰子の実丸ごと1個にストローを刺して水分をとりながら、両国の国歌斉唱、関係者の祝辞や謝辞を聞きました。
 校舎は鉄筋コンクリート平屋造りで6教室あり、2部授業で500人の子どもたちが学ぶそうです。式後、教室では学用品などのおみやげが配られ、子どもたちと私たちは折り紙をしたり、紙飛行機をとばしたり、校庭の一角では贈られたボールでサッカーを楽しんだりしました。
 また校庭で村の人たちに歯の検診・治療が行われました。何の設備もない校庭に日本から多くの機材や薬品を持ち込み、清潔な水を用意しての炎天下の治療には歯科医師団に大変な苦労があったものと思われます。そしていわば1回限りの治療でしょうから、医者として心残りなことが多くあったのではないかと、校庭の隅から拝見していて思いました。

 4日目、最後の日はアンコール遺跡を訪ね、その壮大さ、繊細さに圧倒されることになりました。駆け足の見聞でしたが、素朴なカンボジアに心を残しながら、夕刻帰国の途へつきました。

 保健・衛生、教育の面でまだまだ多くが劣悪な環境にありますから、SCHECの活動が一層広がること、継続されることの大切さが痛感されました。「井戸を掘った人を忘れない」という中国の諺をふっと思い出しましたが、このカンボジアでSCHECの活動は文字通り井戸を掘ることから始まったんだなあと気がつきました。
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